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長岡弘樹『白衣の嘘』を読んだ感想|医療知識をトリックに使った短編集【ネタバレ注意】

長岡弘樹の『白衣の嘘』を読んだので、感想をかきます!


「医療」をテーマにした6つの短編集で、伏線が鮮やかなミステリです。
一気読みしてしまいました。

長岡弘樹『白衣の嘘』のあらすじ

悲哀にみちた人間ドラマ。温かな余韻が残るラスト。
『傍聞き』『教場』を超える、傑作ミステリ集!


バレーボール全日本の女子大生・彩夏と、彼女を溺愛する医者の姉・多佳子。彩夏の運転で実家に向かう途中、ふたりはトンネル崩落事故に遭ってしまう。運転席に閉じ込められた妹に対して姉がとった意外な行動とは……(「涙の成分比」)。


命を懸けた現場で交錯する人間の欲望を鮮やかに描く、珠玉の六編。


引用:Amazon内容紹介(白衣の嘘

長岡弘樹『白衣の嘘』を読んだ感想

長岡弘樹『白衣の嘘』読了後の感覚的評価

お気に入り度:★★★★☆
読み返したいか?:YES


それぞれの話にあらすじがなく、どんな話かわからないのでどきどきします。
とくにこの小説は。
語りの人物は、加害者なのか、被害者なのか、傍観者なのか、オチまでわかりません。


どの話も伏線が見事で、ラストでなるほど!と納得。
見逃した伏線がないかつい戻って読んでしまいました。


「医療」がテーマということで、医療的な専門知識をトリックにつかったお話が多かったです。
勉強にもなります。


以下、ネタバレ注意です!

「最後の良薬」を読んだ感想

「……狭心症に使うニトロとさ」


「火薬の原料は、別のものなんだってね」


縫合が苦手な副島が、先輩医師・児玉を差し置いて担当させられた末期がんの女性・友葵子との交流。


友葵子が実は児玉の元妻だった、というトリックは見破れました。
「児玉は盲腸の手術の成功をきっかけに結婚した」という会話、友葵子が「盲腸の手術歴あり」だけど「腹部は、なめらかで艶のある肌」という描写は簡単に結びつきます。
なるほど感動系ね、とのんびり読んでいたらオチでびっくり!


詐欺の常習犯である友葵子を見張っているように描写されていた刑事たちが逮捕したのは副島本人。
友葵子のことを棚に上げて、副島はニセ医者という詐欺をしていたのでした


読み返してみると、刑事が登場するシーンでは副島の描写が一切ありません
「博士」と呼ばれる患者が憶測を述べているのみで、うまく誘導されたなーと思います。

「涙の成分比」を読んだ感想

多佳子は顔を寄せてきて、涙で濡れているに違いないわたしの頬にキスをした。


バレーの全日本選手に選ばれた彩夏と医者を務める姉・多佳子がドライブ中、トンネルで事故にあってしまう。
彩夏は死を望んだが、姉は許さなかった。
それはなぜかーーというストーリー。


多佳子が妹を助けた理由はタイトル通り「涙の成分比」。
彩夏を助ける直前、単なるキスをしたのではなく、涙の味を確かめて彩夏の感情を推し量ったのでした。


このトリックをさりげなく、あるいは効果的にするための伏線が見事でした!
彩夏が「自分の感情がわからない」という「失感情症」であること。
そして、二人は帰国子女で、キス・ハグはあいさつのようなものであること。


しかし、家族なのだから、そして姉は医者なのだから妹を死なせまいとするのは自然なことなのではないか、という違和感も感じました。

「小医は病を医し」を読んだ感想

過去に泥棒をしていた公務員・角谷は心筋梗塞に倒れ、盗みを働いた病院に入院する。
主治医の岸辺の指示で刑事・喬木と同室になる。
それはなぜかーー岸辺は自分の罪を見抜いているのかーーというストーリー。


読後感が一番良かったです。
岸辺先生あっぱれ!

「ステップ・バイ・ステップ」を読んだ感想

医師・上郷は、上司・西本の指示を受け、河原崎の手術後に出勤しなくなった研修医・内山に通勤の練習をさせる。
内山がひきこもった理由は何かーーというストーリー。


上郷と河原崎との(意味がなさそうな)会話シーンが多く、どういう話なのか最後までわからなかったです。
「複数回のしゃっくり」が伏線になるとは・・・知識がないとさっぱり気づきませんが、医療の知識があるとより面白いのかもしれませんね。

「彼岸の坂道」を読んだ感想

「マーラーだよ。何があっても『復活』させる」


友瀬生原と救命救急センター長・津嘉山の後釜争いをしている。
しかしある日、事故で運ばれた津嘉山が自身の処置を命じたのは、生原だったーーというストーリー。


アリバイからして、津嘉山を突き落としたのは生原だろうなとわかりましたが・・・
なら津嘉山はなぜ生原に手術してもらったのか、というのが疑問でした。


津嘉山が生原の手術で一命をとりとめたことには大きな意味がありましたね。

「小さな約束」を読んだ感想

「最高ですよ。これ以上ないほど」


刑事・浅岡の同じく刑事の姉・実鈴は腎不全で腎臓の移植が必要である。
姉の担当医・貞森に姉は好意を抱いているようで浅岡は後押しするが、貞森は事故死してしまう・・・という話。


事故の直前に浅岡に婚約指輪らしき箱をあずけていたので、突然の死はかなりショッキングでした。
でもその事故は実は自殺だったようです。
婚約するための実鈴に腎臓移植するための・・・という感動ものかと思っていいのでしょうか?


実鈴が追っていた轢き逃げ犯が貞森だった、というのは蛇足のような気がします。


貞森が死んだのは実鈴のためか、良心の呵責のためか・・・どちらなのでしょうね。

長岡弘樹の『白衣の嘘』以外のおすすめ本

『白衣の嘘』が面白かった!という方には長岡弘樹さんの他の短編集もおすすめです。



警察学校を舞台とした短編ミステリ連作集。
「白衣の嘘」とは違い、語り手のその後が明らかになります、