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吉田修一「国宝」を読んだ感想(喜久雄が見た美しい歌舞伎の世界を映像化してほしい)

こんにちは!riwaです。


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吉田修一著「国宝」を読みました。


「怒り」「横道世之介」など、わたしは吉田修一さんの小説が好きで、しらみつぶしに読んでいます。「国宝」は2018年9月に発行された新作で、見つけた瞬間からわくわくしていました。


帯を見てみると「歌舞伎小説」という初めてよむジャンルだったので「おもしろいかな・・・?理解できるかな・・・?」と不安でしたが、やはり吉田修一に外れ無しです。


この記事では、「国宝」のあらすじと読んだ感想をまとめています。


「国宝」のあらすじー俺たちは踊れる。だからもっと

1964年1月1日 長崎は料亭「花丸」
侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、
この国の宝となる役者は生まれた。
男の名は、立花喜久雄。


極道の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、
喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。


舞台は長崎から大阪、そして、オリンピック後の東京へ。
日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。


血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。
舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながら、
その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか?


引用:朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:国宝 上


任侠一家に生まれた「喜久雄」が歌舞伎の世界で生き抜く物語です。


「上 青春篇」では、喜久雄の学生時代から30代ごろまで。「下 花道篇」では30代ごろから往年までが描かれています。 

「国宝」を読んだ感想

風情ある三人称の語りが魅力的

その年の正月、長崎は珍しく大雪となり、濡れた石畳の坂道や晴れ着姿の初詣客の肩に積もるのは、まるで舞台に舞う紙吹雪のような、それは見事なボタ雪でございました。


「国宝」の出だしの一節です。


誰かが語り掛けるようなこの文体、プロローグだけかと思いきや最後の最後までこの調子で続きます。吉田修一さんの小説でこのような語りがされるのは初めてのことかなと思い、とても意外でした。



でもこの情緒ある語りのおかげで「歌舞伎小説」の雰囲気がいっそう魅力的になっていて、とても好きです。難しい言葉回しはほとんどなく、読み進めにくいと感じることはありませんでした。


歌舞伎のシーンを「見たい」という欲求に駆られた

主人公である喜久雄の激動ともいえる人生が描かれていて、そのストーリーがおもしろいのはもちろんですが、魅力的なのは喜久雄たちが演じる歌舞伎のシーンです。


とくに印象に残ったのが、「料亭花丸の場」と「怪猫」。歌舞伎を見たことがないわたしでも、その美しさを感じることができました。


わたしの想像力に限界があるのがくやしいところです。「国宝」はぜひ映像化してほしいなと思います。喜久雄が見た美しい歌舞伎の世界を、わたしも見てみたいです。


天才歌舞伎役者の役は、どんな名俳優が演じても違和感を感じてしまいそうなので、アニメ映画化がいいのかなと思います。落語をテーマにした作品「昭和元禄落語心中」も元が漫画というのもありますが、ドラマよりアニメのほうが物語に入りこみやすかった印象です。

以下、ラストシーンの核心にふれていますので、ネタバレ注意です。


「国宝」ラストシーンの考察(ネタバレ注意)

喜久雄が求めた世界とは?

往年の喜久雄は舞台から降りても日常に歌舞伎の世界を見、歌舞伎の舞台ではより鮮やかな歌舞伎の世界を見ていました。

「そら、きれいやったで。一豊も見たら腰抜かすやらな。…俺な、あそこに立ちたいねん。あんな舞台で踊りたいねん。」


喜久雄がだれにともなくつぶやいたのは、父の兼五郎の最期、ほとばしる血が染める雪景色を思い返したときでした。


この景色が、うつくしい世界にとらわれた喜久雄が求めた「舞台」だったのかなと思いました。人がまさに死ぬその刹那的な瞬間を「美しい」と喜久雄は
感じていたようにみえます。


ラストシーンは、「歌舞伎の舞台のうえで、喜久雄が自死してしまう」というもののではないかと思いましたが、違いましたね。喜久雄は死ぬその瞬間まで踊り続け、自分で自分の命を絶つという選択肢は持てないのでしょう。


三人称の語り手は、誰だったのか?

誰かが語り掛けてくるような文体が魅力的な「国宝」ですが、最後までそれが「誰なのか」は明言されませんでした。


わたしは最初、喜久雄を近くで支えていた誰かかなと思っていたのですが、最後まで読んでみると「歌舞伎の神様のような人」の語りのように感じました。


「錦鯉」で喜久雄が「雪姫」を演じるシーン。

その一瞬、雪姫の動きが止まり、まるでそこから喜久雄自信が抜け出して舞台に立ち、なんとも不思議そうな顔で、じっとこの天井を見上げたのでございます。


「・・・あんた、誰や?」


ここで、「語り手」と「喜久雄」の目があったかのような印象を受けました。


どこのシーンかは忘れてしまったのですが、喜久雄は「歌舞伎の神様」について言及していたような。歌舞伎の世界で頂点に立った喜久雄がその存在に気付いたとしても不思議ではありません。


まとめ

「国宝」を読んだ感想を書きました。


吉田修一さんの小説が好きだからという理由だけで読み進めたため、歌舞伎についての知識はゼロなわたしでしたが、すっかりその世界に魅了されました。ただ「歌舞伎を見に行こう!」とまでは思えません・・・格式がとても高いように感じるからです。


喜久雄が見た歌舞伎の世界を想像したくても限界があるので、ぜひ実写化してほしいなと思います。

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